軽井沢中学校PTAは、“軽井沢中学校生の「通学用バス利便性向上」および「通学のための公共交通機関確保」を求める請願”を軽井沢町議会に対して行いました。

令和3年12月13日に開催された軽井沢町議会社会常任委員会(公共交通を所管)にて軽井沢中学校PTAより若松副会長、藤巻茂沢支部長が参考人として、また福本が紹介議員として出席し、請願の趣旨等を説明し、質疑応答に応えました。発言内容は概ね次の通りです。

若松副会長

おはようございます。軽井沢中学校PTA副会長の若松を申します。本日は、PTA会長の今野が所用で来られませんので、代理で私からお話しをさせていただきます。

まず、今回の嘆願内容は、

  1. 2022年の町内循環バス西コースについて、下校に適した時刻編成とすること。それがかなわない場合には。下校専用の車両を用意すること
  2. 茂沢から通学するための公共交通手段を確保すること

の2点です。茂沢についての話は、後ほど藤巻の方から説明をさせていただきますので、私のほうからは町内循環バスに関するお話をさせていただきます。

軽井沢中学校に登校する生徒の中で、西地区に住む者にとってはその通学距離などからバスでの通学がひとつの選択肢となっています。また雨天や降雪のことも考えると、非常に重要な交通手段となっています。事実、雨天時などの利用者数は通常より多くなります。

しかし、嘆願書にもありますように。下校時のバスダイヤが合わないことで、1時間以上もの待ち時間が発生する場合があり、著しい不利益が生じています。
では、軽井沢中学校の生徒における循環バスの利用の実態について、補足の説明をさせていただきます。

まず部活をしていない生徒の場合、水曜日の下校時間が15:00、それ以外が16:10となっていますが、バスの乗降者数データを見てみると、水曜日の15:24軽井沢病院発のバスの乗車数は、他の曜日に比べると約4倍の乗車数となっております。これは軽井沢中学の生徒の利用が増えているためで、このことから、下校時のバス利用の需要があることを示していると考えられます。また部活をしていない生徒が水曜日以外は待ち時間が1時間あるため、バス利用ができていないことが推測されます。

また自分の娘は吹奏楽部に所属しており、登下校ともバスを利用しておりますが、その話によれば、登校時の利用数が15名程度あるが、帰りは5名程度しか利用者がいないそうです。これはバスが合わないために利用できないということを如実に表している事実だと思います。この時期だと、17;15に部活終了で17:20発のバスに乗るのはかなり急ぐ必要があり、しばしば乗り遅れています。そもそも乗るのをあきらめている生徒もいるのだと思います。

さらに昨年行った生徒に対するバス利用に関するアンケート結果からも、登下校・部活終了時間にあうバスがあれば積極的に使うと回答したのが、徒歩通学を除く生徒の28%もありました。
以上のことからも、下校時にバスを利用したいにもかかわらず、利用できないという状況が見て取れます。利用できない理由は、やはり待ち時間にあり、常識的に考えても、バスを利用するのに1時間以上も待つということはあり得ないことですし、生徒から貴重な時間を奪っており、また安全の面からも保護者としては強く改善を求めたいと思います。

また下校時にバスの利用ができないため、保護者による送迎をしている家庭も多くあります、夕方の送迎は仕事のやりくりが難しいことや、往復の送迎にかかる時間を考えると保護者にとっても大きな負担となっています。

以上のことから、これらの問題を解決するために、バスダイヤの変更を強く請願します。

では、茂沢からの通学に関する実情について、藤巻のほうから説明させていただきます。

藤巻支部長

軽井沢中学校PTA茂沢支部の支部長、藤巻です。茂沢支部生徒の通学の現状につきまして、支部長の私からご報告申し上げます。

茂沢支部は自転車通学ですが、 長距離 約8km 且つ 急勾配の坂道があり通常の自転車で登ることが困難 です。その為、在籍する全生徒が 現在、 電動アシスト自転車にて通学しております。
しかしながら9 月~ 3 月 に お い ては下校時刻が日没後とな り通学路の街灯 も乏しい為、暗く 危険な事 、また冬季は路面が凍結する事、野生動物 鹿、熊、カモシカ等 の 生息地域の為 、 登下校時の遭遇確率が高い事などから、保護者による毎日の送迎が必須となっている状況です。

保護者の負担が大変 大きく、 また 町内循環バスの最寄りのバス停まで 遠い為約 5km 、是非とも「通学のための公共交通機関確保」を切願致します。

福本

現代は格差社会であると考える人が多くいます。所得や職業によって分断された望ましくない社会、格差社会は、個人の努力だけではなかなか解消することができません。

しかしながら、今若松軽井沢中学校PTA副会長がおっしゃった、通学格差とでもいえる状況は、大人の工夫や努力によって解消することができます。

週に4回も1時間以上バスを待って帰宅する子どもがいます。毎日のように望まない1時間を過ごさざるを得ない子どもは、何を思っているでしょう。

少なくとも、自分が大切にされているとは考えないでしょう。自己肯定感の醸成が教育の眼目のひとつとされている現在、そのような状況を放置することは、大人の怠慢とすらいえるのではないでしょうか。

また茂沢においては、藤巻支部長が実情を述べられましたが、他の地区にはない電動アシスト自転車の購入という経済的負担も生じています。自転車通学ができない冬季などでは、保護者の負担も大きいものです。茂沢においては、そもそも循環バスがないのですから、1時間でも待てばバスがくるという状況ですらありません。

この問題は、現在子どもをもうける年になった町民が中学生の頃から、西地区の保護者たちが折に触れて教育委員会や町議会議員、町に断続的に働きかけています。しかし、10年以上の働きかけにも関わらず、放置されたままです。

是非、社会常任委員の皆さまがこの請願を良しとして議会の意見となり、行政が動き、すべての軽井沢中学生が勉学やスポーツに等しく平等な通学条件で打ち込むことができるようになることを願います。

>> 軽井沢中学校PTAが議会に提出した請願の内容についてはこちらをご参照ください

請願の趣旨を説明後、委員より質問があり、所要時間は45分ほどでした。説明のあと参考人と福本は退室し、その後、午後から当該委員会にて本請願に関する審査が行われ、眞島 聡子委員が継続審査(※2)が適当として採決されましたが結果は否決(継続審査にすることを否決)、最終的には全員一致で趣旨採択(※1)に決しました。この請願の審査結果は社会常任委員会が議会に報告し、最終的に議決されることとなります。

※1 趣旨採択:自治体によっては一般的な採択方法ではあるものの、当町議会においてはあまり採られない採択の一種。願意はもっともであるが、実現性に乏しい場合などに「採択」ではなく「趣旨採択」となる。

※2 継続審査とは、引き続き委員会で審査を続けることを意味する。関係部署への請願内容の送付は行われず、不採択ではないものの、事実上却下されたに近い。

本会議での請願の決議

令和3年12月17日に開催された軽井沢町議会において、軽井沢町学校PTAが提出した、“軽井沢中学校生の「通学用バス利便性向上」および「通学のための公共交通機関確保」を求める請願”は社会常任委員長より趣旨採択として報告され、本会議で諮られました。質問者は福本のみで、次のようなやり取りがありました。質疑は多くありましたが、以下、発言の趣旨を記します(議事録ではありません)。

横須賀社会常任委員長

軽井沢中学校としての請願であるのに、西だけの請願であり、全体的な目配りが足りない。軽井沢中学校PTAの会長は軽井沢町PTA連合会の会長でもあるので、連合会で諮って全体的な解決を目指した方が良かった。もっと全体的に調査をして、問題を確認しての請願が望ましく、今回の請願は不公平である。

福本

軽井沢町PTA連合会には軽井沢高校、3小学校、風越学園については承知していませんが、オブザーバーとしてISAKが含まれます。全町的な目配りは議会や行政に求められるものです。今回の請願は中学校からのものであり、高校や小学校の通学問題にまで目配りするべきだったというのには違和感を覚えます。今回の請願は、10年以上前からこの問題を解決すべく断続的に活動をしてきた西地区についてまず行ったもの。他の地区の改善は不要といっているのではなく、まずはできることから請願をしたということです。

質疑のあと、討論が行われ、福本が、今回の請願は趣旨採択ではなく採択するべきと主張しました。

討論に続いての決議では、「趣旨採択ではなく採択するべき」に賛成したのは福本のみ。他は「趣旨採択」に賛成をし、議会として、今回の請願は趣旨採択となり、関係部署に送付される事となりました。

採択ではなく趣旨採択となったことは心残りではありますが、請願内容が関係部署に送付されるという点では両者に違いはなく、請願は成功したと考えています。

今後は行政が請願を真摯に捉えて解決に向けてスピード感をもって動いてくれるのを期待し、またその動きを継続的にチェックして参ります。