ピーク時は年間870万人の観光客がお越しになった軽井沢町ですが、次のような特徴があります。

  • 日帰りの観光客が多い
  • 夏季、ゴールデンウィークといった繁忙期に観光客が集中する季節性が高い

これらの特徴により繁忙期の交通渋滞やタクシー・ホテルの人手不足、閑散期のビジネス不振といった課題があります。

課題解決の為に

課題解決のためには、入込数が減ったとしても売上に影響がでないように長期滞在型のリゾート地への転身を図ると共に、繁忙期以外にも観光客に楽しんでもらえる観光資源の開発・発掘を進めて季節による入込数の変動を少なくする必要があります。宿泊は軽井沢にしていただき、まずは軽井沢町内を楽しんだ後は周辺自治体の名所に足を伸ばして巡るという旅行スタイルが望まれます。

観光資源の開発

私の提案により実現した「軽井沢レシピコンテスト」は閑散期の誘客およびご当地料理の開発を目的としてものですが、まだまだ端を発したばかりですし、イベントも一過性のものです。

軽井沢レシピコンテスト

一年を通じて提供できる観光資源としては軽井沢町もエコツーリズムの振興を目的に旅行商品の開発を進めており、これは正しい方向です。現代の観光客は感動できる体験に消費を惜しまない傾向があるからです。また富岡市・安中市・軽井沢町による観光連携佐久広域連合(小諸市、佐久市、小海町、川上村、南牧村、南相木村、北相木村、佐久穂町、軽井沢町、御代田町、立科町)でも広域連携を進めています。しかし、特に佐久広域連合のウェブサイトに当てはまりますが、各地の観光名所をスポットで紹介してるに過ぎず、周遊プランとして公開しているコンテンツは個々の名所のつなぎが弱く、一層の努力がないと成果が見込めないでしょう。長期滞在をしてもらうためには、多くの魅力的な旅行商品を提案する必要があります。

観光圏整備法

観光客に長期滞在をしていただくためには周辺地域との連携を進めることが必要なことは前述の通りですが、そのためには「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律」(観光圏整備法)の活用が効果的です。この法律では各種法律の特例を活用することができます。

旅行業法の特例

ひとつは旅行業法の特例です。旅行商品を販売するためには旅行業代理店業としての登録が必要ですが、登録には旅行業務取扱管理者の専任が義務付けられています。この国家資格は学生時代旅行業を志した私も所持していますが、かなり集中して学ばないと合格できないもので、小規模宿泊事業者では事実上旅行業代理店業を営むことはできませんでした。旅行業法の特例を利用すると旅行業務取扱管理者を専任することなく旅行業代理店業としての登録(観光圏内限定旅行業者代理業)が可能になります。これによって下図に示したように民宿などの小規模宿泊事業者でも近隣への日帰りツアーの販売をすることができます。ひとつの宿泊施設だけでは最低催行人数を集まられなくても、複数の宿泊施設で同じツアーの集客を行うことで催行ができるケースも創出できるでしょう。ツアー参加を動機にした連泊需要以外にも旅行業者や旅客自動車運送事業者らの仕事も生まれます。

運送法の特例・共通乗車船券

他に道路運送法の特例があります。バス事業者が路線バスの運行回数を増やす場合、道路運送法上の認可等に代わり、国土交通大臣への届出で可能になります。また複数の運送事業者が共同で割引周遊切符の発行を行う場合にも道路運送法や鉄道事業法など、それぞれの法律ごとに必要な届出に代わり国土交通大臣に届け出で可能になります。観光圏間の移動手段確保によって旅行需要の喚起となるでしょう。

農山漁村活性化プロジェクト支援交付金

観光圏整備による支援のひとつには「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金」もあります。これは都市等との地域間交流施設の整備に対して最大1/2の交付を受けることができるものです。

土屋町長はクラインガルテン※の実施を政策に挙げていますが、この事業も農山漁村活性化プロジェクト支援交付金の対象となるでしょう。

※クラインガルテン:宿泊施設をともなう農園。例えば都会から週末に軽井沢に滞在しながら農園の世話をして地域の住民との交流などを楽しむことができる。クラインガルテンは「小さな庭」を意味するドイツ語。 近郊では佐久市(佐久クラインガルテン望月)、立科町(立科町クラインガルテン)、御代田町(信州みよたクラインガルテン大星の杜)、上田市(信州上田クラインガルテン眺望の郷 岩清水)、長野市(大岡中ノ在家クラインガルテン)、小川村(小川村クラインガルテン)などで導入している。

観光圏整備法活用には

観光圏整備法とは自然・歴史・文化等において密接な関係のある観光地を一体とした区域であって、区域内の関係者が連携し、地域の幅広い観光資源を活用して、観光客が滞在・周遊できる魅力ある観光地域づくりを促進するものです(国交省HPより引用)。活用のためには観光圏整備実施計画が国土交通大臣によって認定される必要があり、前述の特例についても旅行業法の特例以外は予め実施計画に記載する必要があります。

まとめ

これまで、通年楽しめる魅力的な旅行商品の必要性を述べました。観光客の季節性(繁忙期集中)を少なくし、長期滞在をしていただくことが当町の観光産業における課題解決に必要であるからです。そのためには広域での観光連携を進める観光圏整備法の活用が求められています。

私の過去の一般質問でその点を町に指摘していますが、その折にはエコツーリズムをまずは進める(軽井沢町は長野県の第一号として観光省のエコツーリズムの推進認定団体となっています)ということでしたが、エコツーリズムという旅行商品の更に先には観光圏整備法を活用した広域連携が当町のさらなる観光産業の発展に必要であるということができます。