私の所属する社会常任委員会の所管事務調査では「公共交通対策について」研究している。
車を運転しない高齢者の買い物や通院手段の確保はとても大切だ。また通学のバスが不便な問題も解決する必要がある。本年度の軽井沢中学に自転車通学をしている子どもたちが遭遇している自動車の接触事故発生件数は異常に多い。いつか重大事故が発生しないか心配だ。バスで通いたいがバスが不便すぎて使えないので自転車通学をせざるを得ないことも一因だ。社会常任委員として任期は来年の3月まで。現在精力的に調査を進めているが、なるべく早く結果を出したい。
さて、「公共交通」といえば、現在多くの自治体で取り組んでいるデマンド交通の研究が欠かせない。デマンドとは「要求」の意。つまり利用者の要求に合わせて車両を運行させてニーズを満たすというもの。
注目のキーワードはMaaS(マーズ:モビリティ・アズ・ア・サービス)。国土交通省は「出発地から目的地まで、利用者にとっての最適経路を提示するとともに、複数の交通手段やその他のサービスを含め、一括して提供するサービス」と定義している※。
令和元年はMaaS元年とも呼ばれる。このように呼ばれるのは国土交通省がMaaS等新たなモビリティサービスの推進を支援する「新モビリティサービス推進事業」の公募を受け付けたことも大きい。これは地域の交通課題解決に向けたモデル構築を推進するもので、2019年、公募51事業から、「先行モデル事業」を19事業選定。約3億円の予算をつけて各事業の取り組みの実現に向けた補助を行なう。
19事業の地域は次の通り。
大都市・大都市近郊・地方都市型(6事業)
- 神奈川県川崎市、箱根町
神奈川県における郊外・観光一体型MaaS実証実験
- 兵庫県神戸市
まちなか自動移動サービス事業実証実験 - 茨城県日立市
日立地域MaaS実証実験 - 茨城県つくば市
顔認証やアプリを活用するキャンパスMaaS及び医療MaaS実証実験 - 群馬県前橋市
社会実装に向けた前橋版MaaSの実証 - 静岡県静岡市
令和元年度静岡型MaaS基幹事業実験
地方郊外・過疎地型(5事業)
- 三重県菰野町
こもののおでかけをMaaSで便利にするプロジェクト - 京都府南山城村
相楽東部地域公共交通再編事業 - 京都丹後鉄道沿線地域
京都丹後鉄道沿線地域での地方郊外型WILLERS MaaS事業におけるQRシステム導入実証 - 島根県大田市
定額タクシーを中心とした過疎地型Rural MaaS実証実験 - 広島県庄原市
庄原地区 先進過疎地対応型MaaS検討・実証プロジェクト
観光地型
- ひがし北海道観光型MaaSにおける移動及び車両データ収集、利活用実証
- 会津 Samurai MaaS プロジェクト
- 伊豆における観光型MaaS実証実験
- 志摩地域観光型MaaS実証実験
- 大津市中心市街地及び比叡山周遊の活性化を目指した大津市版MaaS実証実験
- 山陰エリア(鳥取県・島根県)における観光型MaaS実証事業
- 瀬戸内の復権へ:海・陸・空の自由な移動網による国際観光先進都市の創造
- 八重山MaaS化事業【Phase1:観光型MaaS構築に向けた実証実験】
※Jana Sochor他 “A topological approach to Mobility as a Service” (2017)によれば、MaaSは、その進捗度合いに応じて、レベル0からレベル4までの5段階に区分することができるとされている。
- レベル0:統合なし(No integration)として単体のバラバラのサービス(Single, separate services)の段階
- レベル1: 情報の統合(Integration of information)として複数交通モードの検索や運賃情報(Multimodal travel planner,price info)の段階
- レベル2: 予約・支払いの統合(Integration of booking & payment)として単一トリップの検索、予約、決済(Single tripfind, book and pay)の段階
- レベル3: 提供するサービスの統合(Integration of the service offer)としてパッケージ化、定額制、事業者内の連携等(Bundling/subscription, contracts, etc.)の段階
- レベル4: 社会全体目標の統合(Integration of policy)としてガバナンスと官民連携(Governance & PP-cooperation)の段階
出典:新たなモビリティサービスや交通分野の先進的取組の動向(国土交通)